　夜のしじまにハーバーライトの織り成す光のシルエット　
水面に映るネオン　長く伸びた自身の影　重厚な船の汽笛に振り向けば　
ゆらゆらと時の狭間で揺らぐ　我が胸の内
　心を閉ざし　平静を装いながら過ごす都会暮らし　心の叫びと裏腹に
華やぐ都会（まち）の景色　まるで白昼夢　
　さんざめく雑踏で自分の行き先が見えない
　
　人生は道標（しるべ）なき旅　誰もが孤独な旅人
あてもなく　ただ嵐の中をさすらい彷徨う

　
　夜更けの海に本音を吐き捨てに来た　涙の捨て場所を探して
孤独を噛みしめるはずの夜の海は　どこか賑やか　拳を握りしめ　
やるせない想い　嘘で固め　凍えた我が気持ちに終止符は打てるのか
　乗り越える勇気がなく　いつも逃げてばかりいた　そしていつからか
歩くことを止めてしまった
　夢を燃やし生きるも人生　路地裏の片隅で　はかなく散るも人生

　人生は無情な独り旅　誰もが不安を抱える
とりつく島もなく　土砂降りの中　移ろう視線

　磯の匂いに誘われて　今宵も訪ねた人影なき波止場
靴音だけが虚しく響く　赤煉瓦の倉庫は朽ち果て　錆びついたレールは
漆黒の闇の中へ消え去っていく
　ひたすら歩いても　桃源郷はこの世にあらず　凍りつき張り裂けそうな
硝子の心　そっと耳を澄ませば波の調べ　そして風の囁き
　幼き頃の鮮やかな一場面が脳裏をよぎる

　戻りたくても戻れないあの時代（とき）
いたたまれず耳を塞ぎ　涙の行方を見送った

　東の空が俄かに微笑み出す　始発が動くその前に　
本音を晒した旅人は　仮面を身につけ　再びざわめきの中へ紛れていく
　平気で悪魔に魂を売り渡す都会の片隅　
仮面の奥は涙も枯れ果てて　何を糧に生きていけばいいというのか
　はからずも　我　たためる翼あり　不死鳥の如く飛び立てるか
はたまた死してその亡骸を土に還すのか

　人生を見つめた夜　波間に漂う我が心
過ぎ去りし日々　儚き夢に溜息ひとつつく午前４時